インタビュー①
意思をもった職人を育てたい
生田啓三(株式会社庭師生樹 代表取締役)
インタビュアー:大石あき(株式会社ヴァルゴス)
2019年4月
生田さんご自身はどんなきっかけからこの仕事を始めたのですか?
28歳のとき、真面目に打ち込める仕事に就こうと、それまで経験した仕事を振り返ってみました。そして「あの仕事楽しかったな」と思い出したのが、10代で経験した造園屋さんでのアルバイトだったんです。
そして、植木職人になろうと決心し、植木職人の親方の下で仕事を覚えることにしました。
修行中は苦労しました。 アルバイトしていたときの親方は優しかったのに、修行先の親方は、厳しい人だったからです。ただ、厳しいところで頑張ってきたのおかげで早く独立できたと思っています。28歳で入って、33歳の1月、5年の経験で独立させていただきました
具体的にどういう点が厳しかったのですか?
とにかく、褒めることはなく怒る親方でした。
でも、私はほとんど、怒られることはありませんでしたね。怒られたくなかったので、言われたことは頭に叩き込んで、二度と繰り返さないようにしていましたから。
これが、優しい親方だったら成長しなかった?
そうだと思います。「怒られるのは、悔しい」って思うからこそ、一生懸命仕事を覚えました。
生田さんは親方と同じように厳しい指導をされていますか?
いえ、怒ることはせずに、しかし、親方から学んだことを次の世代に引き継ぐよう職人の教育に力を入れています。
例えば、親方は仕事も早いんです。いまだに鮮明に覚えている親方の言葉は、「ゆっくりやって綺麗な仕事は誰でもできる。でも、早くてきれいな仕事ができるやつはなかなかいない。そこを目指せ」というものです。
早くてきれいな仕事ですか?
はい。早くてきれいな仕事には段取りを徹底することが大切です。そのため、仕事に取りかかる前にミーティングを行うようにしています。
それから、チームワークも大切にしています。例えば、掃除ですが、今までの職人の世界では、下の人間にやらせて親方はやらないことが多かったです。でも、当社では、私も含め全員で行うことで早く綺麗な仕事ができるようになっています。
段取りから学ばせるところは少ないと思いますがそれができるかできないかで仕事の質は大きく変わるので意識しています。
仕事は覚えた人間の財産になります。会社の歴史は浅いですが「伝統」というものを意識しつつ、それを自分なりに進化させて、技術や考え方を伝えています。
最終的にはどのような職人になってほしいと考えていますか?
自分の意思をもった職人、リーダーを増やしていきたいですね。言われたことをただやるのではなくて、もっと上手にできる方法、もっと早くできる方法を意識しながら仕事をしてほしいと思っています。
職人それぞれに個性があります。いいところは伸ばして、苦手なところは少しづつ改善できるように指導しています。切磋琢磨しながら向上して欲しいです。
造園業には資格は必要ですか?
造園施工管理技士や造園技能士などの国家資格もありますが、実は、草刈機、チェーンソー、クレーン車などを利用するためにも資格は必要です。例えば、草刈機を使用するための刈払機取扱作業者という資格は国家資格に比べて取得するのが簡単なものです。
しかし、それらの資格がないと大きな現場での仕事ができないなど、仕事の幅が狭まってしまうので、当社では積極的に取得のバックアップをするようにしています。
株式会社庭師生樹は、個人宅だけではなく、公園や道路などの公共事業や大手企業の仕事など様々な仕事を請け負っています。そのため、そういった資格を活かすことができるのです。
個人宅のみを請け負っている会社だと使用する機会がない資格もありますので、取得しないままの方もいると思います。様々な資格を取得し、様々な経験を積める株式会社庭師生樹での仕事で、職人としての守備範囲を広げることができます。
生田さんの考える造園業、植木職人の仕事の魅力とは?
外で仕事するのは気持ちがいいですよ。それに、この仕事は、身体を使う仕事なので「ジムいらず」なんです。うちの会社に入った人でも「8kg痩せた」という話もききます。健康的です。
また、毎日変化もあります。色々な現場行きますが、仕事内容も植栽や剪定、草刈りなど多岐に渡ります。個人邸の管理は同じところに何度も行くので繰り返しという部分はありますが、それでも毎回変化や発見があるんですね。自然が相手なので全く同じ状況なんてないです。
そうやって、変化の中で学んでいく面もありますよね。
はい。そういったことを記憶していくことが大切だと思っています。それを積み重ねていく。常に勉強です。木の名前も覚えるようにしています 。
木の名前も覚えているんですね。若いとき、植木屋さんでアルバイトをしているときに木に興味をもったのですか?
その当時は、全然。花にすら興味はありませんでした。28歳で本格的に修行を始めてからです。
仕事をしている中で、「あっこの木はこの時期に花が咲くんだ」など感じるようになってきて、どんどん知りたくなって、自分で勉強し始めました。自然とそうなっていきましたね。
「植木屋さんになりたい」と志望する方にメッセージはありますか?
私は、仕事を仕事と思わず、楽しく「感じながら」仕事をしています。同じように植物を感じながら仕事をしてもらえたら、いいですね。
確かに、感じながら仕事をしていると「常に変化している」ってことも意識できますよね。感じることをしていないと、この仕事でも、ただ「木を切っている」「木を植えている」を繰り返しているように思えてしまうかも……。
そうなんですよ。だから私も、「あの木は、こぶの病気になっているね」「花が咲いてきたな」など職人たちに声をかけるように心がけています。
特に今の季節、春(このインタビューは4月に行いました)は、もっとも変化が感じられるので好きです。花が咲いて、若葉が芽吹いて……。「感じる」醍醐味を味わえるのが庭師の仕事です。