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インタビュー②

お客様とのコミュニケーションが大切

生田啓三(株式会社庭師生樹 代表取締役)
インタビュアー:大石あき(株式会社ヴァルゴス)
2019年4月

お客様の様々な要望に触れているうちに「木の未来」について考えるようになったという株式会社庭師生樹代表の生田。お客様とのコミュニケーションを大切にし、自らの経験をもとに丁寧な説明を心がけています。

庭のお手入れの依頼をすると不満が残ってしまうことがよくあります。「ちょっとしか切ってもらえなかった」だとか、一方で「バッサリ切られてみすぼらしくなった」っていう話も聞きます。

よく、「さっぱり切って」と言われることがありますが、人の感覚は違います。私は20%切ったら十分だと思うけど、お客様は、80%切らないと「さっぱり」だとは思わないとか。

現場で確認しないとわかりませんが、「ちょっとしか切らない」とき、実は、ちょっとしか切る必要がない場合があります。ちょっとずつ切って樹形を整えているのです。

私も最初は、「庭の木を切って」と言われたら「全ての木にハサミを入れなければいけないのかな?」と思っていましたが、今では「この木は切る必要がありません」とお話しするときもあります。

でも、自分では20%で十分だと思っているのに、お客様が「80%切ってくれ」という場合もありますよね。

「今、それだけ切ると暴れて(徒長枝が伸びすぎている状況)一年後には樹形が整わなくなりますよ」など、丁寧に説明をするようにしています。

お客様とのコミュニケーションが大切です。私は、自分たちの今までの経験をもとに説明をし、お客様のご希望とあわせ、一番いい解決策を見つけることができると自負しています。

「さっぱり切って」と言われたときに「はい。さっぱりですね」とだけ言って、どんどん切ってしまうようなことはしません。

バッサリ切るのは、簡単です。でも、バッサリ切ったものは綺麗な形に戻ることが難しくなってしまいます。美しい木の形に戻すのに何十年もかかることもあります。

木は、一度切ってしまうとつなぎ直すことはできないので、「これくらいではどうでしょう?」など、お客様にお声がけをしながら切るようにしています。美容院みたいですね。

仕事によっては、頻度が半年に1回、1年に1回、3年に1回など、様々なパターンがあります。3年に1回の場合は、「切り戻し」と言ってあえて棒のような状態まで切ってしまって、新しい枝が成長するようにしておくような切り方をするときもあります。

その場所の環境や気候、木そのものの性質、樹木に手を入れる(剪定などの)頻度など、様々な条件を考えて、切り方の提案しています。

そのような条件は、植栽や造園のときも大切ですよね。

はい。例えば、風が吹き抜ける場所は木が育ちにくいので、「ここは風が吹き抜ける場所だから」と正直に説明してから、丈夫な木を提案します。 また、「ここではあまり大きく育って欲しくない」というお客様のご希望を踏まえ、その木の10年後、20年後の姿(樹形や大きさなど)も考えてお話をさせていただくこともあります。

生田さんは、目の前の木の綺麗さだけでなく、その木の未来のお話をされている点が面白いですね。

この仕事をしていると、「越境(隣の敷地との境界線を越えてしまうこと)しているから切ってくれ」と言われることがよくあるんです。

また、マンションなどでは、そのときの綺麗さだけを考えて木を植えている場合も多く、未来までは考えていないんですね。やがて、「日が当たらない」「虫が気になる」などの不満になってしまいます。

そのような木は、ぶつ切りにされ、みすぼらしくなってしまいます。そして、2〜3年後にはまた「切ってくれ」となり、キリがありません。

そういった要望への対応を日々しているからこそ、「この場所にはこの木を植えた方がいい」「この木はこういう風に植えた方が綺麗に成長する」と考えるようになりました。木が好きな人だったら、出来るだけ手を加えず、綺麗な樹形を楽しみたいですよね。

庭の真ん中に木を植えれば、手を加えずに自然な樹形を楽しめます。でも、実際は、そのようにできない場合も多い。狭い場所や木を高く成長させたくない場合は、1.5mくらいまでしか伸びない種類を選ぶといいと思います。

盆栽のように楽しむことができます

鉢植えで楽しむのもいいですよ。鉢植えなら手を加えなくても綺麗な樹形を楽しめます。

ただ、鉢植えではスッキリしないと思うときもあります。そういうときは、コンクリートで囲って水抜きをし、石やブロックを積んで外構と馴染ませて作った鉢の中に木を植えます。そのようにして植えた木は、背の高くなる種類でも伸びすぎずに自然な樹形を楽しめます。

「株式会社 庭師 生樹」で今後伸ばしていきたい仕事はありますか? 

「木」の仕事にこだわりたいですね。会社も「生樹(いぶき)」という名前です。自分で作った言葉ですが、「生きる」「樹」という意味と、「息吹く」「芽吹く」という伸びていくイメージで、そのようにつけました。ただ、庭を作るだけならどこでもできます。私は、「木」を良くしていきたいと思っています。

いつから木に対するこだわりがうまれたのですか?

独立したあとです。それまでは、パパッと切って「よし、綺麗に切れたぞ!」と自己満足していました。けれど、仕事を続けているうちに、仕事の間だけでなく、街中や自然の木も気になり始め、毎日見て歩くようになり、「手を入れない方が綺麗だな」と思うことも増えてきたんです。それから「スッキリしながらも自然な形を保つには、どうすればいいのか」と考えるようになりました。

「木をより良くしたい」「木を生かしたい」と言いながら、木をバッサリ切る伐採の仕事もするんで……こんなこと言える立場なのかな?と思いますが。

そういうところが誠実ですね(笑)生田様がホームページを作られるにあたって「木が好きな人と出会いたい」とおっしゃられたのが印象的でした。普通だったら「30歳代の主婦向け」とか「シニア層向け」とかそういう表現をしてしまうのですが、「木が好きな人」って感覚的で面白いなと。

木が好きなお客様だと、仕事のやりがいもあります。お互いに楽しめるんですね。大口のお客様だったので可能だったのですが、 一緒に生産(木の畑)に選びに行ったこともあります。お客様が選んでいただいた木の中から、樹形(木の骨格のこと)をみて美しく成長するものを採用ました。

これからも、木が生き生きと成長するサポートしていきたいと思っています。

木の手入れ

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