株式会社 庭師 生樹(いぶき)・代表 生田啓三


インタビュー1

意思をもった職人を育てたい

株式会社 庭師 生樹の代表 生田啓三に、自身の修行時代の話から職人の指導方法、造園業、植木職人の仕事の魅力についてききました。

生田さんご自身はどんなきっかけからこの仕事を始めたのですか?

28歳のとき、真面目に打ち込める仕事に就こうと、それまで経験した仕事を振り返ってみました。そして「あの仕事楽しかったな」と思い出したのが、10代で経験した造園屋さんでのアルバイトだったんです。

そして、植木職人になろうと決心し、植木職人の親方の下で仕事を覚えることにしました。

修行中は苦労しました。 アルバイトしていたときの親方は優しかったのに、修行先の親方は、厳しい人だったからです。ただ、厳しいところで頑張ってきたのおかげで早く独立できたと思っています。28歳で入って、33歳の1月、5年の経験で独立させていただきました。

具体的にどういう点が厳しかったのですか?

とにかく、褒めることはなく怒る親方でした。

でも、私はほとんど、怒られることはありませんでしたね。怒られたくなかったので、言われたことは頭に叩き込んで、二度と繰り返さないようにしていましたから。

これが、優しい親方だったら成長しなかった?

そうだと思います。「怒られるのは、悔しい」って思うからこそ、一生懸命仕事を覚えました。

生田さんは親方と同じように厳しい指導をされていますか?

いえ、怒ることはせずに、しかし、親方から学んだことを次の世代に引き継ぐよう職人の教育に力を入れています。

例えば、親方は仕事も早いんです。いまだに鮮明に覚えている親方の言葉は、「ゆっくりやって綺麗な仕事は誰でもできる。でも、早くてきれいな仕事ができるやつはなかなかいない。そこを目指せ」というものです。

早くてきれいな仕事ですか?

はい。早くてきれいな仕事には段取りを徹底することが大切です。そのため、仕事に取りかかる前にミーティングを行うようにしています。

ミーティングが「早くてきれい」の秘訣

それから、チームワークも大切にしています。例えば、掃除ですが、今までの職人の世界では、下の人間にやらせて親方はやらないことが多かったです。でも、当社では、私も含め全員で行うことで早く綺麗な仕事ができるようになっています。

段取りから学ばせるところは少ないと思いますがそれができるかできないかで仕事の質は大きく変わるので意識しています。

仕事は覚えた人間の財産になります。会社の歴史は浅いですが「伝統」というものを意識しつつ、それを自分なりに進化させて、技術や考え方を伝えています。

最終的にはどのような職人になってほしいと考えていますか?

自分の意思をもった職人、リーダーを増やしていきたいですね。言われたことをただやるのではなく、もっと上手にできる方法、もっと早くできる方法を意識しながら仕事をしてほしいと思っています。

職人それぞれに個性があります。いいところは伸ばして、苦手なところは少しづつ改善できるように指導しています。切磋琢磨しながら向上して欲しいです。

造園業には資格は必要ですか?

造園施工管理技士や造園技能士などの国家資格もありますが、実は、草刈機、チェーンソー、クレーン車などを利用するためにも資格は必要です。例えば、草刈機を使用するための刈払機取扱作業者という資格は国家資格に比べて取得するのが簡単なものです。

しかし、それらの資格がないと大きな現場での仕事ができないなど、仕事の幅が狭まってしまうので、当社では積極的に取得のバックアップをするようにしています。

株式会社庭師生樹は、個人宅だけではなく、公園や道路などの公共事業や大手企業の仕事など様々な仕事を請け負っています。そのため、そういった資格を活かすことができるのです。

個人宅のみを請け負っている会社だと使用する機会がない資格もありますので、取得しないままの方もいると思います。様々な資格を取得し、様々な経験を積める株式会社庭師生樹での仕事で、職人としての守備範囲を広げることができます。

生田さんの考える造園業、植木職人の仕事の魅力とは?

外で仕事するのは気持ちがいいですよ。それに、この仕事は、身体を使う仕事なので「ジムいらず」なんです。うちの会社に入った人でも「8kg痩せた」という話もききます。健康的です。

また、毎日変化もあります。色々な現場行きますが、仕事内容も植栽や剪定、草刈りなど多岐に渡ります。個人邸の管理は同じところに何度も行くので繰り返しという部分はありますが、それでも毎回変化や発見があるんですね。自然が相手なので全く同じ状況なんてないです。

そうやって、変化の中で学んでいく面もありますよね。

はい。そういったことを記憶していくことが大切だと思っています。それを積み重ねていく。常に勉強です。木の名前も覚えるようにしています。

木の名前も覚えているんですね。若いとき、植木屋さんでアルバイトをしているときに木に興味をもったのですか?

その当時は、全然。花にすら興味はありませんでした。28歳で本格的に修行を始めてからです。

仕事をしている中で、「あっこの木はこの時期に花が咲くんだ」など感じるようになってきて、どんどん知りたくなって、自分で勉強し始めました。自然とそうなっていきましたね。

旅行先でも木や草花が気になって写真を撮る

「植木屋さんになりたい」と志望する方にメッセージはありますか?

私は、仕事を仕事と思わず、楽しく「感じながら」仕事をしています。同じように植物を感じながら仕事をしてもらえたら、いいですね。

確かに、感じながら仕事をしていると「常に変化している」ってことも意識できますよね。感じることをしていないと、この仕事でも、ただ「木を切っている」「木を植えている」を繰り返しているように思えてしまうかも……。

そうなんですよ。だから私も、「あの木は、こぶの病気になっているね」「花が咲いてきたな」など職人たちに声をかけるように心がけています。

特に今の季節、春(このインタビューは4月に行いました)は、もっとも変化が感じられるので好きです。花が咲いて、若葉が芽吹いて…。「感じる」醍醐味を味わえるのが庭師の仕事です。


インタビュー2

お客様とのコミュニケーションが大切

お客様の様々な要望に触れているうちに「木の未来」について考えるようになったという株式会社庭師生樹代表の生田。お客様とのコミュニケーションを大切にし、自らの経験をもとに丁寧な説明を心がけています。

庭のお手入れの依頼をすると不満が残ってしまうことがよくあります。「ちょっとしか切ってもらえなかった」だとか、一方で「バッサリ切られてみすぼらしくなった」っていう話も聞きます。

よく、「さっぱり切って」と言われることがありますが、人の感覚は違います。私は20%切ったら十分だと思うけど、お客様は、80%切らないと「さっぱり」だとは思わないとか。

現場で確認しないとわかりませんが、「ちょっとしか切らない」とき、実は、ちょっとしか切る必要がない場合があります。ちょっとずつ切って樹形を整えているのです。

私も最初は、「庭の木を切って」と言われたら「全ての木にハサミを入れなければいけないのかな?」と思っていましたが、今では「この木は切る必要がありません」とお話しするときもあります。

でも、自分では20%で十分だと思っているのに、お客様が「80%切ってくれ」という場合もありますよね。

「今、それだけ切ると暴れて(徒長枝が伸びすぎている状況)一年後には樹形が整わなくなりますよ」など、丁寧に説明をするようにしています。

お客様とのコミュニケーションが大切です。私は、自分たちの今までの経験をもとに説明をし、お客様のご希望とあわせ、一番いい解決策を見つけることができると自負しています。

「さっぱり切って」と言われたときに「はい。さっぱりですね」とだけ言って、どんどん切ってしまうようなことはしません。

バッサリ切るのは、簡単です。でも、バッサリ切ったものは綺麗な形に戻ることが難しくなってしまいます。美しい木の形に戻すのに何十年もかかることもあります。

木は、一度切ってしまうとつなぎ直すことはできないので、「これくらいではどうでしょう?」など、お客様にお声がけをしながら切るようにしています。美容院みたいですね。

仕事によっては、頻度が半年に1回、1年に1回、3年に1回など、様々なパターンがあります。3年に1回の場合は、「切り戻し」と言ってあえて棒のような状態まで切ってしまって、新しい枝が成長するようにしておくような切り方をするときもあります。

その場所の環境や気候、木そのものの性質、樹木に手を入れる(剪定などの)頻度など、様々な条件を考えて、切り方の提案をしています。

そのような条件は、植栽や造園のときも大切ですよね。

はい。例えば、風が吹き抜ける場所は木が育ちにくいので、「ここは風が吹き抜ける場所だから」と正直に説明してから、丈夫な木を提案します。 また、「ここではあまり大きく育って欲しくない」というお客様のご希望を踏まえ、その木の10年後、20年後の姿(樹形や大きさなど)も考えてお話をさせていただくこともあります。

生田さんは、目の前の木の綺麗さだけでなく、その木の未来のお話をされている点が面白いですね。

この仕事をしていると、「越境(隣の敷地との境界線を越えてしまうこと)しているから切ってくれ」と言われることがよくあるんです。

また、マンションなどでは、そのときの綺麗さだけを考えて木を植えている場合も多く、未来までは考えていないんですね。やがて、「日が当たらない」「虫が気になる」などの不満になってしまいます。

そのような木は、ぶつ切りにされ、みすぼらしくなってしまいます。そして、2〜3年後にはまた「切ってくれ」となり、キリがありません。

そういった要望への対応を日々しているからこそ、「この場所にはこの木を植えた方がいい」「この木はこういう風に植えた方が綺麗に成長する」と考えるようになりました。木が好きな人だったら、出来るだけ手を加えず、綺麗な樹形を楽しみたいですよね。

庭の真ん中に木を植えれば、手を加えずに自然な樹形を楽しめます。でも、実際は、そのようにできない場合も多い。狭い場所や木を高く成長させたくない場合は、1.5mくらいまでしか伸びない種類を選ぶといいと思います。

鉢植えで楽しむのもいいですよ。鉢植えなら手を加えなくても綺麗な樹形を楽しめます。

ただ、鉢植えではスッキリしないと思うときもあります。そういうときは、コンクリートで囲って水抜きをし、石やブロックを積んで外構と馴染ませて作った鉢の中に木を植えます。そのようにして植えた木は、背の高くなる種類でも伸びすぎずに自然な樹形を楽しめます。

「株式会社 庭師 生樹」で今後伸ばしていきたい仕事はありますか?

「木」の仕事にこだわりたいですね。会社も「生樹(いぶき)」という名前です。自分で作った言葉ですが、「生きる」「樹」という意味と、「息吹く」「芽吹く」という伸びていくイメージで、そのようにつけました。ただ、庭を作るだけならどこでもできます。私は、「木」を良くしていきたいと思っています。

いつから木に対するこだわりがうまれたのですか?

独立したあとです。それまでは、パパッと切って「よし、綺麗に切れたぞ!」と自己満足していました。けれど、仕事を続けているうちに、仕事の間だけでなく、街中や自然の木も気になり始め、毎日見て歩くようになり、「手を入れない方が綺麗だな」と思うことも増えてきたんです。それから「スッキリしながらも自然な形を保つには、どうすればいいのか」と考えるようになりました。

「木をより良くしたい」「木を生かしたい」と言いながら、木をバッサリ切る伐採の仕事もするんで……こんなこと言える立場なのかな?と思いますが。

そういうところが誠実ですね(笑)生田様がホームページを作られるにあたって「木が好きな人と出会いたい」とおっしゃられたのが印象的でした。普通だったら「30歳代の主婦向け」とか「シニア層向け」とかそういう表現をしてしまうのですが、「木が好きな人」って感覚的で面白いなと。

木が好きなお客様だと、仕事のやりがいもあります。お互いに楽しめるんですね。大口のお客様だったので可能だったのですが、 一緒に生産(木の畑)に選びに行ったこともあります。お客様が選んでいただいた木の中から、樹形(木の骨格のこと)をみて美しく成長するものを採用しました。

これからも、木が生き生きと成長するサポートをしていきたいと思っています。